作品の紹介

彫刻は、イメージが石という素材と一致したときに初めて作品となり、表現においてそれが力強く、またデリケートなものとなったり様々な表情をみせるものとなります。

美術全体において重要なものに感性や感覚というものがあります。作品に感性があってこそ初めて彫刻がひとつの造形、または共通する「ことば」やメッセージとして生きてくるものです。

静かな時にしか捉えられないもの、内面の生命や感受性に耳を傾けることは、作者が美術を通して目指している「抽象的な表現」と関わるものです。

造形に接することにより豊かさを感じる、またそれを得ることのできるような彫刻を目指し続けてゆければと思います。

今後の課題

制作された作品は常にある場所の中において存在し、またその場を常に必要とするものです。そこで僕の関心は作品と周りの環境との関係にまで至ります。

例えば、いわゆる伝統的な”庭”についてはそれ自体がひとつの総合美術でありますが、そこに見い出される重要な要素の中には”造形美”が含まれていると考えます。それは庭の中に包括されている空間を演出する為の様々な要素に因るものや、それのみではなく環境全体における広範囲な造形を示すものでもあるでしょう。

そこで “造形美”とはいったいどういうものなのでしょうか。僕にとってそれは彫刻と、尚且つそれを含めた空間全体であり、その現実の空間の中においてある種 ”美の意識” と言えるものが感受できるものであると認識します。

Gallery とわ~る 個展

作品の一つ一つは譬えてみるとそれぞれが言葉であるのかもしれない。

そしてそれぞれの作品が日常の生活の場において創造豊かな造形力を表現し、またその素材と形において常に親しめるものであってほしい。

人々の生活とそれを取り囲む空間の中において、例えば仮に町中のある一定の場所を想定する場合に、その場をより特徴豊かなものにする為には、そこにどういうものが必要になるのだろうか。

例えばそこに彫刻美術を取り入れるとすれば、それがその場に適し更に優れた彫刻作品であるならばきっと地域を特徴付ける重要な要素にもなる事でしょう。

彫刻美術により空間を創り出すこと。

僕自身、彫刻について考察する折にはもとより個体型である作品からその周りを取り巻く空間への拡がりについて想像せずにはいられない。

生きてゆく上では人は誰でも空間と共存しており、その空間を包括する環境と常に深い関わりを持っている。そして視覚的な生活空間とは、つまりは人々の内にある潜在意識-物に対する考え方や思考形態の顕われでありそれはこれから後も環境の中において継続、発展されてゆくものである。

林立するビルの中には人の行き交いと町の繁栄があり、そこには今現在の文化がある。

現代の物質の豊かさに比べると、本来それに比例するべきである人々の幸福において町の機能はその外観に比べると意外に淋しいものかもしれない。

もし石などの素材を用いた彫刻に人々が触れ、その場に親しみを覚えるような環境を作り出すことが出来るならば、美術が町中においてそして人々の中で実際に生きづくことが出来るに違いない。

初めは何でも一つの課題において考え、デッサンをしたり模型を制作したりしてみるものである。そして次第に推敲を重ねた上で、いずれはそれらの計画を実行に移してゆけるように今後も一歩ずつ努力を続けて行くつもりである。

[2003年5月、 Gallery とわ~る 個展において。]

studio BALANCE 展示

僕の作品についての発想は、その多くは過去のイメージが基となっています。

遠い過去の経験、遠い記憶の世界から何かが見え始め、それが自己認識された後にいずれ作品へと発展してゆきます。

制作の上では常に新しい経験/主に造形の趣向についての発見があり、それは自己の作品のスタイルと思索における上で更なる追求を同時に伴うものです。

[2007年 10月、 studio BALANCE 展示において。]

「石の花」展示作品

今度の展示のテーマ『石の花』について。

石の花というテーマ。それは本人が日頃、芸術(石の彫刻、美術全般)を自然と関わりの深いものとして意識していることから、今回の展示の題材として選びました。

過去の歴史の中では、中世あるいはそれ以前の時代から『自然』は彫刻の伝統の中において一つの重要なテーマでした。それは東、西洋の美術いずれにおいても扱われていた題材であり、例えば植物のレリーフ模様や柱頭(キャピタル)の装飾として、現在においても西洋のロマネスクやゴシック時代の建築によく見出される通りです。

今回の展示はそれらのクラシックな美術の要素に私個人の解釈と感性を加える、つまりはそれを自身の好みを通して立体の作品に実現するということが目的であります。

「自然」の中には形や色を通じて感じることのできる美的、芸術的な要素があり、それは『神秘的な魅力』として常に自分の意識の中に存在していると思います。その神秘的な魅力を彫刻として捉えること、つまりその魅力を常に明解なものとしてゆくことは同時に、これまでに自身の内でうまく認識されていなかったものへの発見を新たに得ることであり、それは制作を続けてゆく上での重要な動機となるものであります。